黄昏東京ラーメン。

「ここは昔と全然変わらんねぇ・・しかも安い」


4人だけの客がカウンターに座って黙々と食べてた中で、俺と一緒に入ったおじいさんが親父に話しかけてた。


「ほうでっか、でももうあと2、3年で辞めようと思ってますんよ」
「もういい年やろうしなぁ」
「今77、あと二ヶ月で78ですわ」
「辞めてどうすんの、退屈やで?」
「さすがに80にもなるとのんびりしたいですわ」
「まだまだ元気や」
「最近は新聞のお悔やみ欄ばっかり見てますよ、大きな病気してなかったらだいたい80くらいですね」
「こないだ亡くなったお姉さんは脳梗塞やったなぁ・・」


ぼろぼろの赤いのれんをくぐった薄くくすんだガラスの引き戸の中。
焦げ茶色した木の板の壁に囲まれた、裸電球でもぶら下がってそうなほの暗い店内。
ラジオからは園芸についてのアドバイスを真剣に聴いてるおじいさんとおばあさんの声。


しばらく京都を離れてた友人が遊びに来たとき、昔あった店の移り変わりだとかを気にしてた。
いつか俺も東京ラーメンが無い、て寂しく思う頃がくるんだろうな。


大量の新入生で沸き立ってる今の構内とは対照的な雰囲気にしんみりしてしまった。
ここにも来れるうちに来るようにしよう。